筑波日本語研究 第二十八号

2024年02月28日発行

田川 拓海

Twitter (X),マイクロブログ,資料性,CMC,会話の発生,引用

要旨

本論文では、Twitterを対象にした日本語研究について整理・検討を行い、1) Twitterが日本語研究の対象として貴重なメディア・媒体であること、2) それにもかかわらず研究論文がまだそれほど多く出ておらず特に査読付き論文誌掲載論文は少ないこと、を示し、3) 会話の発生と引用というトピックを取り上げて、新語や俗語だけでなくコミュニケーションの観点からもTwitterは興味深い対象であることを見る。

谷 文詩・蔡 嘉昱

日中同形語,連体修飾,日中翻訳,翻訳パターン

要旨

本稿では、日中同形語の「存在(日本語)」・“存在(中国語)”に焦点を当て、これらの言葉の意味の関連性、及び「連体修飾+ような+存在」構文を中国語に訳すパターンについて分析した。結論として、以下2つのポイントがある。1)中国語の“存在”は、日本語の「存在」の影響を受け、「哲学的な意味、客観的実在」という意味を生み出すようになる。2)日本語の「連体修飾+ような+存在」構文は、中国語の「連体修飾+ような+“存在”」構文に訳せるか否かは、その日本語の「連体修飾」のタイプに大きな関係がある。

孫 継偉

指示性,現実性,不定指示,排除型不定名詞句

要旨

本稿は日本語の「別の人」、「別人」、「他の人」、「他人」などの「排除型不定名詞」を研究対象とし、その使い分けを考察した。各研究対象の使い方をより簡潔で分かりやすく説明できることが本稿の研究目的で、研究の結果が言語教育には役に立てると幸いである。「別の人」、「別人」、「他の人」、「他人」という4つの言葉の共通点は、いずれも「不定」指示と「不特定」指示の用法があり、四者ともに使われるときに「排除した参照点」の数は必ず1つでなければならない。その一方、四者には次のような相違点がある。「別の人」は対照に用いられ、対照の対象が3つ以上になる場合でも使える。「AとBとは違う人だ」という意味でも用いられる。「別人」は指示対象が「非現実的」である場合がある。「別の人」と同様に「AとBとは違う人だ」という意味で用いられる。「他の人」にも対照の使い方を持つ。「みんな」など全体を表す語と共起でき、排除した参照点以外の全員を指示することができる。「他人」は「身近ではない人」という属性を表しうる。排除した参照点以外の全員を指示する場合でも使える。

王 鑫

自動詞,複合名詞,語構成,修飾,格

要旨

本稿は現代日本語の「名詞+自動詞連用形」型複合名詞の語構成に注目する。まず、前後項の結合を修飾関係の成り立つものと成り立たないものに分け、その上、修飾関係の成り立つものについては、さらに下位分類を施した。その結果、自動詞連用形が後項を担う場合、結合されやすい名詞を多い順で並べると、「主語」「場所」「対象」「原因」などを表すものであることがわかった。次に、自動詞連用形が前項に位置する場合と後項に位置する場合におけるその結合関係と分布の相違は複合名詞の異なる名付け機能 (モノへの名付けか動作・状態への名付けか) に由来すると述べる。最後に、自動詞連用形が後項に位置した複合名詞は、他動詞のそれとは異なり、述語の用法を持つものの、モノとしての意味は場所と被動作主に限定されていることを主張する。

劉 玲

 

要旨