筑波日本語研究 第十六号

2012年01月31日発行

和氣 愛仁

コーパス,形態素解析,カラ格,受動文

要旨

「現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)」の検索アプリケーションとして公開されている「中納言」を用い、カラ格受動文の用例検索を行う。本来形態論的情報しか付与されていない「中納言」であるが、一定の検索条件を与えることによって、構文論的な条件による用例検索が疑似的に可能な場合があることを示す。また実際に検索されたカラ格受動文の用例を分析することにより、これまで主として研究者の内省によってきた言語研究にさらなる信頼性を与えるために、大規模な均衡コーパスによる用例検索が有効であることを示す。

馬 小兵

複合格助詞,「をもって」,構文機能,意味特徴

要旨

複合格助詞「をもって」については、統語上、意味上どのような特徴があるのか。「をもって」句は、どんな文の成分になるのか、またどの成分に関連するのか、さらに「をもって」句を含む文の主語、「をもって」に先行する名詞、「をもって」句がかかる述語のタイプは、どうなっているのかなどを中心に、論を進めていく。

劉 剣

シテイル,シテイナイ,シタ,シナカッタ

要旨

本論文はシテイナイを中心に考察を行い、シテイナイとシナカッタの違いを明らかにした上で、シテイナイの意味特徴には「区間性」という特徴があることを主張した。その肯定形式の「シテイル」の意味特徴にも「区間性」という特徴があると推論している。