著者名 |
Hideki Zamma [三間英樹] |
論文題目 |
English Cluster Simplification and Optimality Theory: Another Critique of Lexicon Optimization |
キーワード |
最適性理論、基底の豊饒、語彙最適化、入力型、子音結合簡略化 |
要 旨 |
本稿では、最適性理論 (Optimality Theory; cf. Prince and Smolensky (1993))における入力の問題について議論する。現行の理論では、「基底の豊饒 (Richness of the Base)」という仮定に基づき、入力型は唯一的に決定されなくても良いことになっている。複数の可能な入力型の中から、語彙最適化 (Lexicon Optimi-zation) という操作によって最適な入力型が選択されると考えられているのである。だが、このような入力型に対する仮定のもとでは、語の形態的な派生が捉えられなくなってしまう上、論理的に可能な連鎖が存在しない事実についての説明が得られないという事態が生ずる。本稿では、英語の子音結合簡略化現象をもとにこの問題を例示し、入力型が予め決定されているべきであることを論ずる。 |
著者名 |
Shinsuke Homma [本間伸輔] |
論文題目 |
Scope of Negation, Syntactic Movement, and Structure of Japanese Negative Sentences |
キーワード |
syntax, quantifier, negation, scope, c-command, unaccusative, passive, causative, movement, Case-checking, Minimalist Program |
要 旨 |
本論文は数量化名詞句(QP)と否定辞「ない」を含む日本語の諸構文(他動詞能動文、非対格動詞文、受動文、使役文、「ている」文)の解釈の(非)曖昧性の問題を統語論的観点から考察し、統一的な説明を与えることを目的とする。Chomsky (1993, 1995)のミニマリストプログラムの諸原理を仮定し、(1) QPと否定辞の作用域関係の決定はQPと否定辞との間に成り立つC統御関係に基づくこと、(2) QPと否定辞との作用域関係は (i) QPの統語的派生、(ii) 格照合のためのQPの移動、(iii) 主要部の移動、といった要因によって決定されることを主張する。また、May (1977, 1985)で仮定されている「数量詞上昇規則 (Quantifier Raising)」を仮定しない説明を提案することによって、Kitahara (1993)などで支持されている、「数量詞上昇規則」を破棄する立場に経験的な裏付けを与えることも目指す。 |
著者名 |
Masao Okazaki [岡崎正男] |
論文題目 |
On Two Half-Line Types in Sievers's Theory of Old English Meter: A Case for Clash Deletion on the Second Metrical Plane in Old English." |
キーワード |
OE alliterative verse, half-line, second metrical plane, Clash Deletion, Minimal Half-Line Constraint |
要 旨 |
古英語の頭韻詩は、一行が古ゲルマン詩特有の二つの半行から形成されているが、その半行の適格性が19世紀から論争の的になってきた。その問題に関して、Okazaki
(1998)が半行内部の音節の配列も関与しているという提案をした。その論証の際に、古英語では第二韻律平面が存在し、その平面上でClash
Deletion(1)が適用されると提案したが、本論文は、その規則の証拠を提出し、Okazaki
(1998)の提案を補完しようとしたものである。 (1) *→./. * -- * (**)(*)(*) 具体的には、Anglo-Saxon Poetic Recordsにおいて、つぎの(2)に挙げた半行は数多く存在するが、(3)に挙げた半行はほとんど存在しないということを実例で示し、(1)の規則の妥当性を論証した。 (2) a. [WORD HLXX] b. [WORD X][WORD LXX] (3) a. [WORD LXHX] b. [WORD LXX][WORD X] (H=heavy syllable; L=light syllable; X=heavy or light syllable) Reference Okazaki, M. (1998) "A Constraint on the Well-Formed ness of Old English Alliterative Verse," English Linguistics 15, 243-280. |
著者名 |
Koichi Nishida [西田光一] |
論文題目 |
On the Presence vs. Absence of the Uniqueness of Reference Associated with the Definite Article in English |
キーワード |
Uniqueness of Reference, Singular NPs with Plural Referents, Sentence Types |
要 旨 |
この論文では英語の定冠詞の用法に老いて、特定の唯一物を指示しないと考えられる用法(潜伏疑問文としての定名詞句、総称用法の定名詞句、等)を取り上げ、それらが指示的用法の定名詞句に対して示す文法的相違点を検討した。特定の事象に言及するものとしないものという視点で文のタイプが二つに区分されるのと平行的に、定冠詞の指示的特徴にも名詞句の表すべき事物の性質が反映されると考えられる。つまり、指示的用法の定名詞句は特定の時間・空間に固定化される事物に対応するが、非指示的用法の定名詞句は変化を受ける複数の事物に対応するといえる。非指示的用法の定名詞句には唯一性の含意が見られず複数個の事物に対応しうるという事実は、定冠詞の機能として複数の事物が関与する変化を集合化して捉える性質があることに起因すると論じた。 |
著者名 |
Naoaki Wada [和田尚明] |
論文題目 |
Toward a New Compositional Tense Theory |
キーワード |
Tense Structure, Tense Interpretation, Finite/Non-finite Predicates, Temporal Schema, Absolute/Relative Tense Component |
要 旨 |
本稿は、任意の時制形式が本来的にもつ時間値を表す時制構造レベルと、時の副詞や文脈など時制構造以外の要因の影響により最終的な時間値が決定される時制解釈レベルからなる時制理論を提案する。この提案は、次の5つの仮説あるいは理論を前提とする。すなわち、定形・非定形の文法、助動詞本動詞説、英語2時制説、4つの時間概念からなる時間図式理論、モダリティ理論である。これらを基に、定形述語は絶対時制部門(時制形態素が確立する時間区域と関係)と相対時制部門(任意の状況が生ずる出来事時と関係)からなる時制構造をもつのに対し、非定形述語は相対時制部門のみからなる時制構造をもつと仮定し、定形・非定形の時制形式それ自体がもつ時間値は時制解釈レベルでdefault値として現れることも、他の要因によって別の時間値に変わることもあるということを実証する。その上で、現在形・過去形・いわゆる未来形・完了形・進行形の時間図式を構築する。 |
著者名 |
Toyoko Amagawa [天川豊子] |
論文題目 |
Semantic Constraints on the Have+A+V Construction |
キーワード |
construction, intrinsic action, homogeneity |
要 旨 |
イギリス英語に見られるhave a walk, have a look at 等の表現において、目的語に現れる動詞のタイプを特定することを目的とした論文です。 |
著者名 |
Hideki Tanaka [田中秀毅] |
論文題目 |
Relative Clauses on Type-Representing Headed Nouns |
キーワード |
数量詞、関係節、序数詞 |
要 旨 |
(i)に示されるように一般に節内に生じたcoverのような助数詞の省略は文法性の低下を引き起こす。 (i) a. Mary bought two covers of the book. b.* Mary bought two of the book. ところが、(ii)のように関係節内に生じた助数詞についてはこのような対立が起こらないという興味深い事実がある。 (ii) a. the book that Mary bought two covers of b. the book that Mary bought two of 本研究では(ib)と(iib)の対立に焦点をあて、助数詞の省略可能性が(ii)のような「先行詞にかかる数量詞が関係節内に生じるような関係節(数量詞内在型関係節)」がもつ性質に還元されることを主張する。 |
著者名 |
Katsuo Ichinohe [一戸克夫] |
論文題目 |
Some Notes on Resultativeness and Agent: with Special Reference to the Resultative -te Aru Construction |
キーワード |
テアル構文、結果相、動作主 |
要 旨 |
(i) 部屋の窓が(*妻によって)開けてある。 (ii) (妻が)部屋の窓を開けてある。 例(i)、(ii)に示すように、日本語には「動詞のテ形+アル」という複合動詞がある。この複合動詞を含む表現の特徴として、テ形動詞が他動詞の場合、その意味上の目的語が(i)のように主格でマークされることも、(ii)のように目的格でマークされることも可能であり、さらに、(i)のような場合には、テ形動詞によって意味的に要求されているはずの動作主が現れることができないという事実が指摘されている。この論文では、テアル構文をNedjalkov and Jaxontov (1988)の基準に照らして考察することによって、(i)は結果相を表す構文、(ii)は完了を表す構文であることを示している。またこの違いは「テ形動詞+アル」の連鎖自体が完了と結果の二種類あるのではなく、その連鎖と項の組み合わせによってそのどちらを表すか決定されるということ、そして、結果相と動作主は共起し得ないということが通言語的に見て言えるのではないかということを示唆した。 |
著者名 |
Manabu Kusayama [草山学] |
論文題目 |
Middle and Tough-Constructions in English |
キーワード |
Tough構文、中間構文、既存性 |
要 旨 |
英語のtough構文と中間構文については、これまでもいくつか先行研究があるが、この2つの違いが根本的にどこにあるのかを明らかにするほど、十分な研究がなされているとは思えない。本論文は、既存性という概念が、これらの構文間の差異を的確に捉えるために不可欠であることを、さまざまな言語事実を通して主張している。そこで、得られた結論は、主語とはなにか、動作主とは何か、という問題とも密接にかかわっていることもあわせて主張されている。 |
著者名 |
Akiko Miyata [宮田明子] |
論文題目 |
Restriction against Deverbal -ed Adjectives in Resultatives |
キーワード |
結果構文、結果句、状態変化 |
要 旨 |
一般的に、結果構文において、結果状態を表す結果句の位置には、過去分詞形はくることができないといわれている。しかしながら、事実を観察していくと、過去分詞のなかでも、いくつかのものは、その位置に問題なく生じることができる。そこで、本論文では、そういった違いがどこから生じているのかを、make/have使役構文と比較検討しながら考察している。 |
著者名 |
Masanobu Ueda [植田正暢] |
論文題目 |
'Arguments' and 'PRO' of Nominalization |
キーワード |
nominalization, argument structure, PRO,
agency, conceptual integration |
要 旨 |
Grimshaw (1990) は項構造にもとづいて派生名詞の統語的ふるまいを説明しようと試みているが,その枠組みでは十分にとらえることができない例がある。一つは,内項が形式的にあらわれない場合(e.g. The destruction was caused by the earthquake.)であり,もう一つは,文主語として立つことができる具格が名詞化で不適切になる場合(e.g. the magic key's opening of the door.)である。本稿では Langacker の提案する認知文法の枠組みでこういった事実が問題なく説明されることを論じ,さらに生成文法の枠組みで PRO を仮定して説明がなされてきた現象(e.g. Political dissidents were under PRO surveillance by the KGB.)がどのように扱われるかということを示している。 |
著者名 |
Keigo Yamada [山田圭吾] |
論文題目 |
Toward a Unified Analysis of Honorification Phenomena in Japanese Exisetential and Possessive Constructions: Is the Subject of Possessive Constructions Really the Dative NP? |
キーワード |
主語、尊敬語化現象、存在文と所有文 |
要 旨 |
述語の尊敬語化現象は、日本語生成文法の枠組みにおいて、主語性のテストとして用いられてきた現象の一つです。この現象を用いて、柴谷(1978)では所有文の主語は「に」格名詞句であるということが主張されています。本稿では、まずこの尊敬語化現象が主語性のテストとしての資格を有するものではないことを論証し、その上で、所有文において実際に主語として機能しているのは「が」格名詞句であるということを主張しています。 |
著者名 |
Keiko Sugiyama [杉山桂子] |
論文題目 |
A Semantic and Pragmatic Analysis of Will: with Special Reference to the Characteristic Interpretation |
キーワード |
Will, Characteristic interpretation, Characterizing sentence, Core meaning analysis |
要 旨 |
Willを伴う文にはJohn {will smoke/smokes} during busy time. のように、その単純現在形の文とほぼ同じように主語の特性や習慣を伝えるものがある。will文が伝えるこのような読みはcharacteristic interpretationと呼ばれる(Declerck 1990)。本論文では、主語にJohnなどの個(object)をもつ文を対象にして、どのような種類の述部が含まれる場合にこのタイプの読みが可能になるのかを問題にした。またKlinge(1993)の法助動詞の核意味分析に従い、特性読みに関わる述部のタイプの制限は、述部の性質とwillの核意味との相互作用の結果生じることを説明した。 |
著者名 |
Joe Morita [森田 省] |
論文題目 |
Some Notes on Prepositional Resultatives |
キーワード |
prepositional resulatives, constraints on the resultative construction, the notion of construction |
要 旨 |
In this paper, I show that prepositional resultatives have not been given a fair treatment which they deserve. Specifically I examine examples with prepositional resultatives like to death or into/out of NP, which will reveal the diversity that the prepositional resultatives have, and the difficulties that they give rise to with some of the proposals made in the literature for the resultative construction. What I have done brings us more problems than solutions with resultative constructions. Yet I believe that this paper makes the first step to a deeper understanding of the resultative construction. |