(html化に伴う補足部分を●で示す)
下等小学
第4級 詞の種類 名詞の諸変化 第3級 後詞・様詞・代詞の諸変化
第2級 動詞・活用の諸変化 第1級 接詞・副詞・歎詞
●この品詞はどれに対応するか。名称上は中根に対応するように見えるが、「名詞の諸変化」や「代詞の諸変化」というところから見て、英文法流の格変化を想定しているか。「後詞」は中根の後詞(助詞)ではなく、助動詞相当?
名詞・代名詞・数量詞・動詞・助詞・係詞・形容詞・副詞・接続詞・間投詞
●国学流の黒川においてもすでにこのような品詞分類がなされていること。国学流文典の品詞分類の変化に注目されること。
「大綱」
近世学校の設、盛なるに及びて、教育の書類、世に公行するもの、日一日を加ふ、其数千百に下らずと雖も、徒に桜楮を費すのみ。如何となれば、著人各其意に任して、記載するを以て、概皆文体一致せず、殊に仮名用例に至りては、錯乱極て甚しく、実に教育の用に備へ難し。これ文法の確定せざるより、世上の文書をして、一体せしむること能はさるなり。」今より後、凡著書に志あるものは、思を文典に認め、審に言詞の品別、仮名の用格、文章の顧応等を考へ、而後始めて筆を下さば、必ず文体一致し、凡百の書類、悉く学校の用に、供ふべきに至るべし。
名詞・形容詞・代名詞・動詞・副詞・接続詞・感詞
名詞に4格、過去・第一現在・第二現在・第一未来・第二未来
●当時の文語作文ののための文法という意識。品詞分類を重視(「審に言詞の品別・・・」)。英文法の翻案(品詞・格など)と国学流の文法の導入(動詞の活用など)。
「序」
今余西洋諸國ノ例ニ倣ヒ、吾ガ國ノ言語ニ就キ、其ノ條理ヲ追ヒ、其ノ品彙ヲ分チ、之ヲ集メテ以文ヲ成ス時ハ、必其ノ法ニ據ラザルヲ得ザル所以ノ者ヲ論ズ
名詞・代名詞・形容詞・動詞・副詞・後詞・接續詞・感嘆詞
現在・充分過去・不充分過去・充分未来・不充分未来
●品詞分類への注目。田中との比較。
名詞(代名詞・数詞)・動詞・形容詞・副詞・接続詞・感歎詞・天爾袁波(名詞・動詞・諸の詞)・助動詞(使役・受身・能力・指定・打消・過去・未来・推量・詠嘆・希望・比況)
●国語辞典を背景にした文法書が教育現場で優位であること。ほぼ品詞が出そろうとともに、助詞・助動詞の分類も現行のそれと相当重なってくること。『広日本文典』との相違。
●『別記』の証例の位置づけ→三土・芳賀。教育用文典と文法研究書との分離の兆し。
「序」(芳賀矢一)
方今文法書の梓に上れるもの、牛に汗し、棟に充てり。然れども、教科書用として適当なるものに至りては寥々たること、晨の星の如し。従来世に行はれたる、それかし氏の文典、くれかし氏の語学、其名は教科用書たりと雖、其実は文法に関する一家の研究なり。まヽ教科用のために作りたるものあれども、名たヽる大家は、教授の上の経験なければ、実際の目的には、なほいたく隔たりたり。・・・・
こヽに三土君が中等国文典は、この通弊を済はんとて物せられたり。君は実際の教育家として、国語の教授を掌れる人なれば、平生の実験をもとヽして、この書は編まれつるなり。一わたり見たるところにては、術語分類等の上に、独創の見解を立てられたるふし、いといと罕なり。教科用書としてはしかあるへき筈ぞかし。この書に挙げられたる例証の、卑近にして趣味に富める、上中下の巻々の、粗より密に進みて、いはゆる円周教案といふ方法を採られたる、教科用書としては大切なる用意に非ざるはなし。
「緒言」(三土)
本書は閲者の熱心なる指導によりて、稿を変ふること数度に及び、大に面目を改めたり。
「例言」(三土)
一, 本書は文法を規則として暗記せしめず、帰納的に規則を発見し、演繹的に之を応用せしむる方法によらむと欲し、規則の前には必、其例を挙げ、更に練習題を加へたり。
名詞・代名詞・動詞・形容詞・助動詞(受身・使役・打消・時・推量・指定)・副詞・接続詞・助詞・感動詞
完了
●教育用文典としての特性。「例言」に見られるような暗記法の否定(当時、すでに暗記型学習に陥っていたか)、帰納的発見・演繹的応用という方法の提示(これが文典内でどこまで実践可能であったか)。芳賀の関与(「緒言」。実際は「完了」の用語の使用など、新しい側面も少なくないのに、なぜ、「序」において、「一わたり見たるところにては、術語分類等の上に、独創の見解を立てられたるふし、いといと罕なり。」と述べるのか。従来、明治文典よりも高い評価が与えられているが、芳賀がどの程度関与したのかをさぐり、明治文典ともども再評価も。
第一学年 文法 仮名遣附字音仮名遣ノ大要 国語品詞ノ分別漢文品詞ノ分別ノ大要
国語文法ハ言文ノ対照ヲ主トシ常ニ口語ト今文トヲ関聯セシメテ今文ニ必須ナル法則ヲ示スヘシ
●今文(明治文語文)中心であるが、言文(口語文)との対照を指示。俗語文典の内容と、文語・口語対照文典の内容の比較など。
「編纂の趣旨」
二,文部省教授要目に於ては初年級迄は現行文に関する文法を課すべしといへり。これ実に至当なる注意にして、上は詔勅法令より、下は新聞雑誌の論説に至るまで、明治時代には自ら明治時代の文体あり。生徒に課する作文も亦常に之を標準となさざるべからず。四年級以上に及びては古文の一斑をも窺はしむるを以て、この時に至りて始めて中古以上の法則をも教授すべきものたり。然るに現今行はるゝ多数の教科書には、一もこの点に注意せるものなし。故に動詞、助動詞の如き今文には全く用ゐざるものをも併せ教へ、その練習題の如きも、或は古文に採り、或は口語を主とし、現今の漢字交り文に採ること至りて稀なり。こゝを以て文法の教授と生徒の作文とは全く相懸絶せる嫌なきにあらず、本書はこの弊に鑑み、今文に用ゐざるものは、皆之を4年級以上の教授に譲り、なるべく今文に適切なる法則を授くるを主として、文例も亦、概して平易なる漢字交り文より採れり。文章法に於ても亦、今文の構造を説くを主眼とせり。これ題して明治文典と称する所以なり。
助動詞の連接 一使役 二受身 三敬語 四打消 五完了の時 六普通の時 七指定 八法
●文語作文との関係を強く意識。明治文典と中古文典との二本立てとするなどの方法、「助動詞の連接」などへの注目。少なくともこの文典では、現行の未然・連用・終止・連体・已然・命令の活用形名がそろっていること。三土の文典との比較。明治期の文典の中でも特に再評価が必要。
作文 作文ハ現代文ヲ主トシ口語及書牘文ヲ併セ課スヘシ
文法 文法ハ主トシテ現代文ニ通用セル法則ヲ説明スヘシ
注意 十一 文法ハ実例ニ就キテ帰納的ニ教授シ実用ニ適切ナラシメンコトヲ要ス
●文語文法優先。帰納的教授の指示→三土・芳賀。
第一学年 文法 品詞ノ大要ヲ授ケ口語、文語ノ異同ヲ知ラシメ用言ノ活用ニ練熟セシムベシ
●初年級における文法指導。文語文法と口語文法の相対的な位置づけ。指導の中心はなお文語文法としながらも、文語文法の導入として口語文法を初年級で指導(橋本『新文典』)。
第一学年 文法 主トシテ口語法ノ大要ヲ授クベシ
第三学年 文法 既習ノ文法的事項ヲ整理シ文語法ノ大要ヲ授クベシ
●口語文法の先行指導。橋本の「改制」への処置。
文法学習指導の意義は、ことばのきまりそれ自身を知ることではなく、生徒の日常生活におけることばのはたらきをいっそう正しく効果的にすることにある
●文語作文の必要がなくなり、文法教育のあらたな実用的な目的を提示。一方で、実際には、文語文法の導入のための口語文法というスタイルを踏襲。目的の希薄な、もしくはうわべだけの目的での文法教授と、機能の並べ立て(リスト化)の方向も。
言語に関する事項 聞くこと・話すこと、読むこと、書くことに関連づけて指導
言葉に関する事項 書くこと、話すこと、読むこと、書くこととの具体的な活動において応用することができるようにする。なお、それらの事項を取り扱うに当たつては、細部にこだわつたり、形式的になつたりしないようにする。
●「細部にこだわったり、形式的になったり」するのはなぜか。教科研・児言研の果たした役割。
言語事項
表現や理解の指導を通して身につけさせ、内容の取り扱いが必要以上に細部にわたったり形式的になつたりしないように注意する必要がある。ある程度まとまった知識を得させるための指導もできるように配慮する。
●「ある程度まとまった知識を得させるための指導もできるように配慮する」と、体系的学習については、オプションと読める記述。
国語の特質を理解させるために、ある程度まとまった知識を得させる指導にも配慮すること。その場合、日常の言語活動を振り返り言葉のきまりについて気づかせ、言語生活の向上に役立てることを重視するとともに、必要以上に細部にわたったり形式的になったりしないようにすること
●「ある程度まとまった知識を得させる指導にも配慮すること」とあり、他の事項と併せてある程度体系的指導にも配慮しなくてはならない、と読める。しかし、同指導要領の解説(文部省『中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−国語編−』平成11年;東京書籍)では、「生徒の興味・関心や学習の必要に応じ、ある程度体系付けてまとまった知識を得させるような指導もできる、ということを示したものである」(p108)とあり、かなりトーンダウンしている。
「〜指導にも配慮すること」と「〜指導もできるようにする」とが同等の表現であるとは思えないが、これは、読み手の方に「目的に応じて的確に読みとる能力」が足りないからか(書き手の「論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力」の問題?)。