2001/11/10(於筑波大)

文法をいかにして国語の学習に「役立てる」か

森山卓郎(京教大)


1 文法学習の目的はまず「言葉について考える」機会を与えること

1−1 現状:子どもたちの言葉の能力には不安がある。

国立教育研究所(有元秀文氏)1996の意見文を書く課題による調査
 主語と述語の対応しない文:5年生で35%、 6年生で18%、
 助詞の不適切な用法   :5年生で20%、 6年生で8%
 (誤字などふくめると6年生でも70%に不完全な文。中学生でもほぼ同様。)
 →「言葉について日常あまり意識しない」ことにまずは問題があるのでは。

1−2 子どもたちが「言葉に注意できる」ようになるために

「言葉について、観察し、発見し、考える」経験が大切。
これは認識能力や判断力にも関連するはずである(メタ認知)。
 そこで、今後必要な方向
 ア)言語体系や表現を直接取り扱う。:教科文法→我々の当面の関心だが、イも関与
 イ)言語表現の奥にある論理や情報のあり方を批判的に考える。:例「国産大豆使
   用」などのクリティカルシンキング

2 どのような「文法教育」がいいのか

まずは「考えて面白い」文法が必要。
 しかし、主体的に考えるための題材は?:そのゴールをどう設定するかは大きな問
題。
 「表現や理解にも役立つ」ならばなおよいはずであり、今後の研究課題といえる。
 当然、外国語の学習にも大いに役立つのであり、そのための具体的な方策が必要。
(例)'will'を「でしょう」と訳させる学校での英語科の慣習の不自然さは、日本語の
「未来」表現を正しく反省することによって解決できる。

 学校文法については、ある意味でのディファクトスタンダードであり、これを本質的
に変えることは現実には極めてむずかしい。とすれば、活用、品詞等の形態的整理は利
用できる。利用できるところは残して、足らざるところを補う、というのがとりあえず
の現実的な解決かもしれない。(もっとも根本的な問題がある部分は少しづつでも改め
ていく必要はある)「妥協」という点で、ベストではないがベターでリアリスティック
な解決。

3 「文法的探索」による読み

(例1)ちるさくら海あをければ海[ ]ちる  高屋窓秋 
(例2)「寒い[ ]」と話しかければ「寒い[ ]」と答える人のいる暖かさ 俵万智
どう違うか:表現者の表現体験を追体験する。味わうとともに、意味解釈の可能性を検
討。言葉に対して注意深くなるということ。

4 説明文読解にも「文法」は応用できるのではないか

・つなぎ言葉に注意する読み
・「謎立ての言葉」「とは」など、キー構造に注意する読み、等々:従来のアプローチ
□文法研究の成果を活かす方向での新たな提案ができないか:読解方法への意識化
・「ミクロな読み」から「マクロな読み」へ:拙稿1994

5 「考えて面白く、かつ、ためになる(こともある)文法」へ:今後の課題

・内容の精選(外国語学習、古典学習との関連)と文法論的妥当性
・「ケーススタディのディレンマ」
・現場の先生方のレディネス
・その他

■参考文献
拙稿1997「文法的に読むということ」『月刊国語教育』1998/1 東京法令出版
   2001「文法と教育−『よう(だ)』の文法的探索を例にしつつ−」『国文学 解釈
と教材の研究』46-2学燈社